チキン南蛮のお話

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更新日:
 2013年5月12日






◎チキン南蛮(宮崎県)
 チキン南蛮(ちきんなんばん)は、鶏肉のから揚げを甘酢に漬け、タルタルソースをかけた揚げ物料理です。鶏南蛮(とりなんばん)と呼ばれることもあるようですが、蕎麦屋さんにある「かしわ南蛮」とは違う料理です。また、丼飯の上に乗せた「チキン南蛮丼」も知られています。
 チキン南蛮は、宮崎県延岡市を発祥とする料理として知られています。その原型は、昭和30年代に延岡市内にあった洋食店「ロンドン」の厨房で出されていた賄い料理だと言われています。その賄い料理は「南蛮漬け」という名が示す通り、「アジの南蛮漬け」などと同様に、衣を付けて揚げた鶏肉を甘酢に浸した料理だったようです。チキン南蛮の発祥には2説ありますが、この「ロンドンの賄い料理」が「チキン南蛮の原型」という点については異存がないようです。
 2説ある発祥とは、いずれも現在も延岡市内でお店を開いている「直ちゃん」というお店と、「おぐら」というお店の2説です。
 「直ちゃん」のチキン南蛮は、上述した「ロンドン」で働いていた後藤直(ごとうなおし)さんが、1964年(昭和39年)に独立し、延岡市栄町に大衆食堂「直ちゃん」を開いた際、この賄い料理をヒントに、安価で手に入りやすい鶏の胸肉を使ったカラ揚げを甘酢に浸した料理を販売したそうです。当時は、一品150円だったそうです。
 「直ちゃん」は、現在でも開業されており、そこで提供されるチキン南蛮は、当初からの甘酢に浸しただけの純粋な南蛮漬けで、現在、主流となっているタルタルソースは用いられていません。直さんの息子で2代目の後藤浩一さんは、当初のチキン南蛮の味を守り続けています。
 そこでは、生後何日目というのを決めた新鮮な鶏肉の皮をはいで、厚いところを切ったり組み合わせたりして、同じ大きさ、均一な厚さになるようにして、塩、コショウをするのだそうです。この仕込みに時間がかかるため、あまり大量には作れないようです。ただ、先代の味を守るだけではなく、必要な改革はしているそうです。例えば、御客様から「マスタードをつけると美味しいよ」と聞かされて、店にマスタードを置くようになったそうです。今では、ほとんどの御客さんがマスタードをつけて食べているそうです。
 また、以前は仕上げはレモンだけでしたが、「カボスが美味しい」と言われて、試してみたら、実際にその通りだったので、現在では使うようになったそうです。いいこと、できることは採用するなど、柔軟性を持ちながら、伝統の味を守っているそうです。
 一方の「おぐら」は、現在の主流となっている、タルタルソースを掛けたチキン南蛮を考案した店とされています。この「おぐら」は、現在、宮崎では知らない人はいないファミリーレストランチェーンになっているのだそうです。
 後藤さんよりも前にロンドンで働いていた延岡市出身の甲斐義光さんは、1956年(昭和31年)に宮崎市に洋食店「おぐら(後に有限会社おぐら)」を開業したそうです。開業時には、チキン南蛮はメニューになかったそうです。1964年(昭和39年)に宮崎市に「おぐら」2号店をオープンした時、店名を甲斐さんが延岡市で修行していた「ロンドン」と同名の「洋食屋ロンドン」としたそうです。この店で、開店翌年の1965年(昭和40年)に、メニューに初めて「チキン南蛮」が登場したそうです。
 当時のスタッフの話では、タルタルソースの「チキン南蛮」が現在の形になり、かつ、人気メニューとなったのは、登場から数年経った1970年(昭和45年)頃であり、当時は、この「洋食屋ロンドン」だけでしか出されていなかったそうです。
 現在は鶏肉は、各部位ごとで売られていますし、買うこともできますが、当時は鶏一羽単位でしか買うことができなかったようです。もも肉はチキンカツや唐揚げにして利用できますが、胸肉は唐揚げにしてもパサパサしてあまり美味しくないため、甲斐さんは、この胸肉をどうするか考えていたようです。
 そんな時、かつて修行をしていた時に食べていたチキン南蛮を思い出したのかもしれません。しかし、それを、さらに一歩進め、新しい味を作り出したのが「タルタルソース」だったようです。一説には、スルメに醤油とマヨネーズをつけて食べることからヒントを得たようです。
 ただ、当時は、海老フライ用のタルタルソースはあったようですが、それがそのままチキン南蛮に合うわけではなかったようです。そこで、甲斐さんはタルタルソースをあちこちから取り寄せて、いろいろなものを試食したようです。
 最終的に「冷やしたサラダ油、酢、卵の黄身を混ぜてマヨネーズを作り、そこにタマネギ、キュウリ、茹で卵などを入れて作り、作ったその日のうちに使いきる。」というスタイルで、チキン南蛮に合うタルタルソースにたどりついたようです。
 おぐら自慢のチキン南蛮は、発売当初から変わらず、鶏胸肉を使っています。柔らかさと大きさを考慮し、生後6カ月以内の鶏肉を使っているそうです。火が通りやすくするのと、見た目を美しくするために包丁を入れて開いてのばし、軽く塩コショウをした後、小麦粉をまぶして卵液をつけ、180度くらいの油で7〜8分揚げ、キツネ色になったら完成となります。
 揚がったチキンは油を切って、素早く甘酢の中に入れて2〜3分浸します。甘酢は蒸発しない程度に温めた状態をキープしており、鶏肉に味が染み込みやすくなっています。このチキン南蛮を皿に盛ったら、最後に特製のタルタルソースをかけて、おぐら自慢のチキン南蛮が完成します。全体的に甘めですが、これがおぐらの味なのだそうです。
 このタルタルソースをかけたチキン南蛮が有名になっていったのは、「おぐら」の店舗展開の影響のようです。「おぐら」は「洋食屋ロンドン」の後、宮崎県内と鹿児島に出店し、1971年(昭和46年)には、初めて延岡市に1号店「延岡おぐら店(現株式会社おぐら大瀬店)」をオープンしました。
 さらに、その後も延岡を拠点に大分にも店舗を展開し、ピーク時には20店舗近くになっていたようです。このような状況下、「洋食屋ロンドン」で人気となっていたタルタルソースのチキン南蛮は、「おぐら」各店舗でも売り出され、それぞれの地域で人気メニューとなり、有名になっていったようです。
 このような経緯がはっきりとしているため、賄い料理を御客様に出せるチキン南蛮に仕立て上げた「直ちゃん」と、現在の主流となっているタルタルソースのチキン南蛮を考案した「おぐら」が、それぞれチキン南蛮の元祖として扱われているようです。
 ちなみに両店とも、鶏肉は胸肉を使用していますが、最近では、脂肪分が多くてボリューム感があるモモ肉を使っている料理店も多いようです。






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